明るい工場

宮本百合子

明るい工場書籍情報

底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年9月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
   1952(昭和27)年12月発行
初出:「働く婦人」
   1932(昭和7)年9、10月合併号
入力:柴田卓治
校正:米田進

明るい工場 4

宮本百合子

 私は二つめの戸を入って行って、そこに書きものをしている若い婦人労働者に、
「今日は」
と云った。
「私は日本からきたんですが、これをみて下さい」
 紹介の手紙を出した。その婦人労働者は手紙をよみ終ると、
「素ばらしいわ! よく来ました。でも、一寸待って下さいよ、いま文化委員のひとがいないから五分ばかり待って下さい」
 やがて、赤い布で凜々(りり)しく髪を包んだ二十二三のこれも元気な婦人労働者が、何冊もの本を小脇にかかえて入って来た。
「――図書室の本が、まだモスクワから届かないんだってさ。手紙をやりましょうね」
「お客さんよ」
 その文化委員の婦人労働者は手紙を見ると、黙って私の方へ手をさし出し、きつく、情をこめて握手をした。
「――みんな見せますよ、見てお国の婦人労働者に話してやって下さい、ね。ソヴェト同盟ではわたしたちがどんなに生活するようになったか」