明るい工場

宮本百合子

明るい工場書籍情報

底本:「宮本百合子全集 第九巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年9月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本「宮本百合子全集 第六巻」河出書房
   1952(昭和27)年12月発行
初出:「働く婦人」
   1932(昭和7)年9、10月合併号
入力:柴田卓治
校正:米田進

明るい工場 6

宮本百合子

 ドン国立煙草工場には自慢の托児所があり二百七十人ぐらいの子供の世話をやいている。私が行ったとき、托児所の庭の青々と茂った夏の楡の樹の下にやや年かさの女が三つばかりの男の子を抱き、金髪の若々しい母親が白い服を着せた生れたばかりの赤児を抱いて、静かに談笑しながら休んでいた。話して見ると、何と愉快なことだろう。この二人の年齢のちがう母親たちは、互いに母と娘とで、二人ながらこの「デゲテ」工場に働いている婦人労働者なのであった。
「わたしはもう自分の末の子を二人ともここで育てて貰ったんですよ。……今度は私の娘が初めての子供をつれて来る番になったわけです。……わたし達の生活はすっかりここにあるんです……ねえオーリャ……」
 案内してくれる文化委員は、工場学校の方へ歩き出しながら話に告げた。
「あの二人は模範的な母親たちですよ。お母さんの方は代議員だし、オーリャは党員候補です」